株式会社 東京電子回路
Tokyo Electronic Circuits Inc.
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* リニアライズ用抵抗値の計算方法
図1において、曲線1はサーミスタ単体RT(実際の市販品)の温度(℃)に対する抵抗値をプロットしたもので、指数関数的に変化しています。一方,曲線2のRNはこのサーミスタに固定抵抗器2本を加えたネットワークの抵抗値で、変化幅が圧縮され、低温(0℃)、中間温度(25℃)、高温(50℃)で直線上にのっています。直線化はRBだけでも実現可能ですが,さらに,抵抗器RAで変化幅が調整できます。図の例はRA=640Ω,RB=7.5kΩです。リニアライズに使用する固定抵抗器の抵抗値は,以下のとおり計算します。
図1で使用したシンボルを下記の通り定義します。
ここで,QTMと抵抗の抵抗値は
RN = RB (RT+RA)/(RT+RA+RB) (式1)
また,横軸温度と縦軸抵抗値のグラフにおいて,RNL, RNM, RNHが直線状にプロットされるためには,
RNL- RNM = RNM-RNH (式2)
式1のRTにRTL, RTM, RTHを入れてRNL, RNM, RNHを求め,式2に代入すると,
RA+RB = {RTM (RTL+RTH)-2RTL*RTH} / (RTL+RTH-2RTM) (式3)
もし,RTL, RTM, RTHを図1のとおり30k, 10.67k, 4.356kΩと仮定すると,式3に数値を入れて,
RA+RB = 8.084kΩ (式4)
式4が直線化の条件です。ただし,RA= 0kΩ, RB = 8.084kΩが変化幅(曲線2の傾き)が最大で,RAが大きくなるにしたがって変化幅(傾き)が小さくなります。また,この抵抗網RNにさらに直列に固定抵抗器RCを加えて,全体の抵抗値を調整することも行われます。
* 交流印加方式PIDの開発:東京都地域結集型研究開発プログラム「成果集Ⅱ」参照
従来のPIDは,測定対象ガスに混じる塗装ミストや紫外線照射による樹脂の分解物などが電極上に堆積し,測定感度が低下しました。また,電極は腐食されやすく交換が必要でした。実験室で1年間使用した電極は、ガス流路を形成するフッ素樹脂が付着し,電極表面の金メッキには下地のニッケルまで到達するピンホールが発生していました。当然のこととしてイオン電流は不安定で誤差は大きくなりました。
そこで、私たちはイオンに交流を印加し、電流を位相検波する方式のPIDを開発しました。しかし、実際に装置を試作した結果、電磁環境の悪い場所ではノイズが混入しやすく、同時に配線による静電容量が低濃度の感度を悪くすることが分かりました。したがって、これらの特性を改善したチャージアンプ方式を設計しました。この方式では、極性の異なる直流電圧を交互に電極に印加し、電荷の蓄積によってイオンを検出しています。ノイズに強く増幅器のドリフト対策も不要でした。またこの方式によって、正イオンと負イオンの移動度の違いが容易に求められるため、拡散定数の違いからイオン種の同定が可能になることが期待されています(注;気中を浮遊する分子の拡散係数と移動度はアインシュタインの関係から比例します。また、分子の拡散係数とイオンの拡散係数は値が近いと仮定しました)。図3にこの回路で求めた正負イオンの電流比と芳香族拡散係数の関係を示します。
・ PIDテーマ研究者(東京都地域結集型研究開発プログラムの分担):平野康之,細川理彰,中野信夫,,原本欽朗,小林丈士,吉田裕道
・引用文献:①平野,加沢,原本,吉田「検知電極の汚染に耐性を持つ光イオン化VOCセンサ」電気学会論文誌E 2, pp. 88-89, 2011,②特公2010-256165.
③特願2011-175078